クニーさんのお話
絵本こんにちは。
きょうは、このあいだのお話の続きです。
とある「ピエロ」のお話になります。
部屋の壁に貼ってあった一枚のポスターから、
物語は始まります。
片膝をあげたピエロがひとり、むこうを向いています。
その隣には「K N I E 」と、アルファベットの文字。
これは、スイスのサーカス団のポスターです。
*「ディック・ブルーナの世界 パラダイス・イン・ピクトグラムズ」より (絶版)
夜、ちいさなおとこの子は、このポスターのそばで眠りにつきます。
おとうさんの語るお話に耳をかたむけながら。
それは、ポスターの中の、このピエロの物語でした。
「ミスター・クニー」と、おとうさんはそう呼んでいました。
それから長い長い時間が経って、そのおとこの子が大人になったある時、
ふたたび「クニーさん」が目の前に現れます。
今度は、1冊の絵本になって。
表紙をめくると、「voor sierk(シルクへ)」と書かれていました。
絵本「meneer knie」は、
ブルーナさんが息子シルクさんへ贈った絵本。
あのときのピエロのお話をどうしても本にしたかったというブルーナさん。
ついに思いを果たす時が訪れます。
ブルーナさん99冊目の絵本となりました。
絵本が出版された時のインタビューで、
ブルーナさんはこんなエピソードを聞かせてくれました。
”ピエロはサーカスの道化で、人を笑わせるのが仕事。
わざと失敗するひょうきんなパフォーマンスだってやってみせます。
「でも舞台をおりたところでは、観客に喜んでもらえるいい仕事
をするために、楽しいなんていっていられないくらいがんばっているんだ。
だから舞台では、あんなに人を楽しませることができるんだよ。」と、
そんな話を物語にして息子に語ったことが、この絵本の原点にはあります。”
*「ミッフィーだいすき!」2001年 vol.5 (講談社)より
それでは、ふたりのたいせつな思い出のなかに、
ほんの少しおじゃまして、クニーさんのお話をみてみましょう。
これは、サーカスのメイクをしていないクニーさん。
ふだんはこんな感じなんです。
ページをめくれば、たゆまぬ練習の日々。
玉乗り、逆立ち、つなわたりにお手玉...
そして、いよいよサーカス本番の日がやってきました。
鏡に映るのは、ひとりのピエロの姿。
舞台のそでから、客席の様子をそっとうかがいます。
さぁ、いよいよ幕が開き、歓声が響き渡ります。
緊張から解き放たれ、喝采へと導かれるクライマックス。
クニーさんは最高の気分に満たされてゆきます。
ブルーナさんの思いが詰まった、宝物のようなお話。
何度も味わいたくなるようなお話ですが、残念ながら日本語版は未刊です。
オランダ語版、英語版を見つけたらぜひ手に取ってみてくださいね。
*DICK BRUNA 『meneer knie』 /Mercis Publising bv,Amsterdam
さぁ、こんどはみなさんも
このピエロのミッフィーの物語を作ってみませんか?
*miffy style オリジナル 「ピエロ ミッフィー」
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